249 藤村克裕雑記帳 | 逸品画材をとことん追求するサイト | 画材図鑑
藤村克裕雑記帳
藤村克裕

立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。

藤村克裕 プロフィール

1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。

1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。

内外の賞を数々受賞。

元京都芸術大学教授。

宝塚歌劇団月組公演を見た日(2)
2014-12-09
座席は二階席中程。ステージが谷底に一望できる。こんなこともあろうかと準備した双眼鏡で、ステージ手前の楽団の準備の様子などを見物などしているうちに開演になった。座席はびっしり満員。
それからはもう、めくるめく宝塚世界。幕間を挟んで約3時間、私は完全にタカラヅカ初体験だったので、びっくり仰天。腰が抜けるような気がした。これでもか、これでもか、と攻めつけられ、ま、まいりました、と降参しようとしてもなお、これがタカラヅカというものじゃ、とだめ押しをされ続けるのだった。

第一部はミュージカル『PUCK』(パック)。森で生まれた妖精「パック」が人間の娘に恋をして罰を受け、人間界で言葉を発せずに一年間過ごすことを求められる。「プック」と呼ばれながら小間使いとして一年間を過ごすが、しかし、あと数時間というところで森を守るために言葉を発し、それまでの記憶を奪われて人間にされてしまう。そして恋した娘に助けられながら一緒に今後を形作ろうとする、とそんな話。最後は人間「パック」になっている。もちろん、展開は、もっと複雑だ。
何と言ってもテンポが速い。そのうえ、二階席だからか、はじめてだからか、キャラクターの区別がなかなかつかない。私は遠近両用眼鏡なので、遠く下方のステージを見るときはあごを下げて上目遣いにしなければならない。その姿勢がつらい(やがて、眼鏡を鼻の下方に下ろしてしまえばよい、と気付いて、そのつらさからは解放された)。はじめのうちは、話のスジを追うのに精一杯のありさまだった。群れをなしてのダンスなど確かに大迫力だが、どこを見ればよいか混乱してしまい、あげく、何人位ステージにいるか数えたりもした。ところが、70人位まで数えるともう次の場面になってしまう。ともかく、展開が速い。どの台詞もよく聞き取れるが、誰の台詞なのか、はじめのうちはなかなか区別できなかったのが、やがて、分かってくるのが不思議だった。舞台装置、照明など、さすがに無駄がなく、実に効果的で感心させられた。最終盤の稲妻の音と光と暗転とが瞬時になされるタイミングなど、すごかった。その雷にうたれて記憶を失いぼろぼろになって倒れているのを発見されて登場した「パック」の靴がピカピカだったのは、いかにもタカラヅカらしいと思った。どんなに服や髪がぼろぼろでも、靴だけは汚れていてはいけないのであろう。
宝塚歌劇団月組公演を見た日(1)
2014-12-09
家人が東京・宝塚劇場のペア招待券を入手して、あんた、タカラヅカみる? と言うので、おう、と見物に出かけた。快晴の午後、久しぶりの銀座。
開場までしばらく時間があったので、軽食でも、とぶらぶら歩いていたら、7丁目「ギャルリーためなが」のウィンドーに、写真のような、いや絵具で描いたような、「ためなが」なのだからきっと絵ではないか、とそういう作品が数点飾られているのが目にとまった。「ロレンツォ・フェルナンデス展」とある。早速、中に入って壁面の作品群を見たが、やはり絵か写真か判然としない。額にガラスはなかった。目を近づけて何度も確かめるが分からない。仕方なく、デスクに向かって仕事中のスーツ姿の女性に尋ねてみると、アクリルと油絵の具と併用して描いたものです、と言う。手の痕跡はほとんど認められない。1970年生まれのスペインの作家、とパネルに説明されている。なるほど、スペインか、と妙な納得の仕方をしてしまった。それにしても手仕事なら、すごい集中力だ。

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