立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
「ラスコー展」に行ってきた(2)
2016-12-20
洞窟の壁をどう復元するのか、そこにどう絵を描いていったか、というレプリカの制作過程も映像で示され、画材やランプも展示されていた。映像では、絵の復元作業には女性が当っていたが、チョークで形の当りをつけ、線刻し、指、筆、息などで彩色していく。私は、線が彫り込まれていることを知らなかった。うかつなことだ。砂岩製のランプにはやはり線刻が施されていた。
そして、いよいよ、実物大のレプリカ。レプリカは5種類。いずれも実に見応えがある。特筆すべきは照明の工夫である。下方からの照明が時折暗転し、ブラックライトに変化する。変化すると、レプリカの線刻のところが蛍光するのだ。つまり、彫り込まれた線の様子が誰の目にもはっきりと見て取れるように工夫されているのである。線が光って闇の中に浮かんでいる。これには大変感心させられた。とはいえ、たとえば「黒い牝ウシ・ウマの列・謎の記号」などでは、蛍光する線刻が選択されているように思えた。すべての線刻が蛍光するのではなく、線刻によっては蛍光を省略された線刻もあるように私には見えたのである。省略する/しない、その根拠が示されていれば、さらにいろいろ感じ取ることもできたように思えたのでこのことは残念に思った。また、ランプの光のような“揺らめき”の再現がなされたら、さらにリアルだった違いない。
そして、いよいよ、実物大のレプリカ。レプリカは5種類。いずれも実に見応えがある。特筆すべきは照明の工夫である。下方からの照明が時折暗転し、ブラックライトに変化する。変化すると、レプリカの線刻のところが蛍光するのだ。つまり、彫り込まれた線の様子が誰の目にもはっきりと見て取れるように工夫されているのである。線が光って闇の中に浮かんでいる。これには大変感心させられた。とはいえ、たとえば「黒い牝ウシ・ウマの列・謎の記号」などでは、蛍光する線刻が選択されているように思えた。すべての線刻が蛍光するのではなく、線刻によっては蛍光を省略された線刻もあるように私には見えたのである。省略する/しない、その根拠が示されていれば、さらにいろいろ感じ取ることもできたように思えたのでこのことは残念に思った。また、ランプの光のような“揺らめき”の再現がなされたら、さらにリアルだった違いない。
「ラスコー展」に行って来た(1)
2016-12-12
東京国立科学博物館で開催中の特別展=「ラスコー展」を見た。見所満載、すごく面白かった。
ラスコーの洞窟壁画について、改めて説明するまでもない。この展覧会のことはチラシで知った。
学生だった時、ヨーロッパを一人で二ヶ月程貧乏旅行した。その時、ラスコーとかアルタミラとかに寄れないか、と真剣に考えた。それらは「原始美術」の超代表選手だから、行って見てみたい、と思うのは自然なことだろう。が、断念した。いかにも行きにくそうだったし、細かな情報を得るスベを知らなかったのだ。
そのかわり、マドリッドの国立博物館にアルタミラのレプリカがあるというのを旅行案内書で知って、せめて気分だけでも、と、そこを訪れた。入り口が分からなくて長い時間ウロウロしたあげく、確かに実物大のレプリカはあったものの、“セメント感”丸出しのシロモノでがっかりした記憶がある。おまけに、薄暗いレプリカの中で座って眺めていると、監視のおじさんが、あーだのこーだの言いながらすり寄って来て、私のような者の体に“本格的に”触ろうとするのだった。なので、私はホーホーのテイで引き上げたのである。アルタミラのレプリカにはそういう思い出がある。
ラスコーのレプリカではまさかそういうことは起こるまい、と思いつつも、いささか緊張しながら科学博物館に出かけたのである。
ラスコーの洞窟壁画について、改めて説明するまでもない。この展覧会のことはチラシで知った。
学生だった時、ヨーロッパを一人で二ヶ月程貧乏旅行した。その時、ラスコーとかアルタミラとかに寄れないか、と真剣に考えた。それらは「原始美術」の超代表選手だから、行って見てみたい、と思うのは自然なことだろう。が、断念した。いかにも行きにくそうだったし、細かな情報を得るスベを知らなかったのだ。
そのかわり、マドリッドの国立博物館にアルタミラのレプリカがあるというのを旅行案内書で知って、せめて気分だけでも、と、そこを訪れた。入り口が分からなくて長い時間ウロウロしたあげく、確かに実物大のレプリカはあったものの、“セメント感”丸出しのシロモノでがっかりした記憶がある。おまけに、薄暗いレプリカの中で座って眺めていると、監視のおじさんが、あーだのこーだの言いながらすり寄って来て、私のような者の体に“本格的に”触ろうとするのだった。なので、私はホーホーのテイで引き上げたのである。アルタミラのレプリカにはそういう思い出がある。
ラスコーのレプリカではまさかそういうことは起こるまい、と思いつつも、いささか緊張しながら科学博物館に出かけたのである。