

立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
『芸術新潮』の谷川俊太郎特集
2025-03-03
『芸術新潮』誌3月号は谷川俊太郎特集=「さよならは仮のことば 追悼谷川俊太郎」。この雑誌が詩人を特集するのは珍しい。つい読み耽ってしまった。
読み耽ったその日からすこし経って、用事で、古くからの知人と南阿佐ヶ谷駅で待ち合わせた。無事に落ち合って、その人の家へと並んで歩き始めながら、じつは、去年、吉増剛造の本で「阿佐ヶ谷の谷川さんの家へ」という文章を見つけて、谷川俊太郎の『道順』という詩を頼りにしてこの通りの南側一帯を随分歩き回ったけど、彼の家を見つけることはできなかった、と話した。知人は、じゃあ案内しよう、と遠回りしてくれた。そのうち、別の話に夢中になっていると、あ、ここだよ、とその人は立ち止まった。
なんともあっけなかった。
「不思議にひくい木造のお家」と吉増氏が書いていたその家のたたずまいは、想像していたのとは全く違っていたし、「犬」の字を丸で囲んだ四つの「登録標」はもちろん、表札もなかった。これじゃあ見つからない。
その日はさっさと用事を済ませて、あかるいうちに帰宅した。そして、ずっとこたつの上に置いたままの『芸術新潮』誌を手に取って、つい、もう一度読み耽った。
読み耽ったその日からすこし経って、用事で、古くからの知人と南阿佐ヶ谷駅で待ち合わせた。無事に落ち合って、その人の家へと並んで歩き始めながら、じつは、去年、吉増剛造の本で「阿佐ヶ谷の谷川さんの家へ」という文章を見つけて、谷川俊太郎の『道順』という詩を頼りにしてこの通りの南側一帯を随分歩き回ったけど、彼の家を見つけることはできなかった、と話した。知人は、じゃあ案内しよう、と遠回りしてくれた。そのうち、別の話に夢中になっていると、あ、ここだよ、とその人は立ち止まった。
なんともあっけなかった。
「不思議にひくい木造のお家」と吉増氏が書いていたその家のたたずまいは、想像していたのとは全く違っていたし、「犬」の字を丸で囲んだ四つの「登録標」はもちろん、表札もなかった。これじゃあ見つからない。
その日はさっさと用事を済ませて、あかるいうちに帰宅した。そして、ずっとこたつの上に置いたままの『芸術新潮』誌を手に取って、つい、もう一度読み耽った。