178 藤村克裕雑記帳 | 逸品画材をとことん追求するサイト | 画材図鑑
藤村克裕雑記帳
藤村克裕

立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。

藤村克裕 プロフィール

1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。

1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。

内外の賞を数々受賞。

元京都芸術大学教授。

VOCA展の上野公園
2018-04-03
夕方、ピンポーン、新聞の集金でーす、という時、その新聞社が後援している展覧会のチケットをオマケにくれることがある。そういえば「VOCA展」のチケットを貰っていた。あまり見物したことのない展覧会だったし、いい陽気だったので、家人と出かけることにした。
 JR上野駅でびっくりしてしまった。公園口を目指して、ホームから階段をのぼったら、隙間のない“人の壁”があった。駅員がロープを張ってホームからの人々を誘導している。“人の壁”どころのハナシではない。ロープの向こうは、奥の方の壁まで、人々が隙間なくびっしり詰まっている。改札を通り抜けて公園に出るために並んでいるのだ。す、すごい、こんなの見たことない。見たことすらないのだから、“体験”するのも初めてだ。もう、脱力してしまった。そういえば、「お花見」だったのだ。
 おとなしく最後尾について、少しずつ前に進み、改札を抜けて上野の森美術館の方へ向かった。と、隙間はうんと広くなった。嫌な予感がした。ひょっとすると、美術館はすいている? 
 すいていた。
 会場の入り口でもらったチラシによれば、「絵画や写真など平面美術の領域で高い将来性のある40才以下の作家を奨励する展覧会で、今年で25回目」だそうである。出品するのは「全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などから推薦された」作家。5名の選考委員によって五つの賞が与えられる。今までのべ850名以上の作家が出品した、という、そういう展覧会だ。そういえば、私の知り合いの何人かもこの展覧会で賞を貰っている。
 今年は34名の作家の作品が展示されている、とのことで、確かにどれも力作だった。若い世代の動向の一端を知る意味でも貴重な機会だった。
 ところで、チラシにあった「平面美術」という言葉が一般的なのかどうか、不勉強で知らない。私は初めて知った。「VOCA賞」の碓水ゆい『our crazy red dots』は端切れの布のパッチワークと言って良い。加えて、それは上方の両端で壁にとめられてシワを生じている。つまり、平面ではなく明らかに立体である。こうした例は今回の展示作品だけからも、いくらでも挙げることができる。「平面」の概念が極めて緩やかに解釈されていることは明らかである。「平面美術」という言葉の発明が成功しているかどうか、ビミョーである。とはいえ、それをあげつらうつもりはない。

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