立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
久しぶりの東京都現代美術館
2020-07-30
長雨の合間、久しぶりに家人と東京都現代美術館に行った。「オラファー・エリアソン展」の体験コーナーには整理券が必要、整理券には人数制限がある、ということを家人が調べてくれていた。なので、菊川駅から懸命に歩いて、開館して間もない時間に飛び込んだ。無事に整理券をもらうと、12時15分からの回になりますので12時10分にきてください、と言う。え? そうなの? ま、体験すべきかどうかは、体験してから考えればいい。それは、ジェームス・タレルの「ガス・ワークス」だったかを体験しそこなっての教訓だ。あれは、今もって悔やまれる。ともかく、私どもの体験は12時15分から。それまで、どうしようか、と思ったが、まず、「常設展」に行った。
近頃美術館を訪れると、なんだか「常設展」が面白い。
美術館が自分のところで所蔵している作品を並べる「常設展」。選び方、並べ方、つまりひところ大流行した「編集」を意識することによって、同じ作品を異なった相貌で見せうる。学芸員の腕の見せ所だ。日頃の研究成果の発表の場でもあろう。
先日は、竹橋・東京国立近代美術館で、開催中の大きな企画展「ペーター・ドイグ展」より、はるかに面白く「常設展」を見た。近美の「常設展」はこのごろ間違いなく面白い。期間を決めて展示が変化するのなら、厳密には「常設」ではないのだけど、それはまあいいのだ。いつも“発見”を促してくれる。
年をとったせいだろうか。ドイグの作品は、確かに達者ではあるが、ここでも「編集」というか、元ネタが露わで、あそこまで露わなのはかえってユニークなのかもしれないけど、私のような老人にはほとんど何も感じるところがなかった。むしろ、イギリスなら、キタイとかホックニーを初期からずーっと見たい、と思った。あと、パオロツィとか。待っててもしょうがないけど。
近美の「常設展」が、どう面白かったかを今ここに書こうとすれば、それはとても厄介なことになる。いずれ避けて通るわけにはいかなくなるだろう。その時は頑張るので、今回はパス。
近頃美術館を訪れると、なんだか「常設展」が面白い。
美術館が自分のところで所蔵している作品を並べる「常設展」。選び方、並べ方、つまりひところ大流行した「編集」を意識することによって、同じ作品を異なった相貌で見せうる。学芸員の腕の見せ所だ。日頃の研究成果の発表の場でもあろう。
先日は、竹橋・東京国立近代美術館で、開催中の大きな企画展「ペーター・ドイグ展」より、はるかに面白く「常設展」を見た。近美の「常設展」はこのごろ間違いなく面白い。期間を決めて展示が変化するのなら、厳密には「常設」ではないのだけど、それはまあいいのだ。いつも“発見”を促してくれる。
年をとったせいだろうか。ドイグの作品は、確かに達者ではあるが、ここでも「編集」というか、元ネタが露わで、あそこまで露わなのはかえってユニークなのかもしれないけど、私のような老人にはほとんど何も感じるところがなかった。むしろ、イギリスなら、キタイとかホックニーを初期からずーっと見たい、と思った。あと、パオロツィとか。待っててもしょうがないけど。
近美の「常設展」が、どう面白かったかを今ここに書こうとすれば、それはとても厄介なことになる。いずれ避けて通るわけにはいかなくなるだろう。その時は頑張るので、今回はパス。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展を見た
2020-07-22
JR上野駅ホームに降り立ち、いつものように階段を登ってから左に進むはずが、あれま、公園口の改札がなくなっていた。というか、いつもの改札は仮設壁ですっかり遮られてしまっていた。矢印の表示に従って進むと、“奥”の方に新しい改札口ができていて、そこから文化会館と西洋美術館との間の広い通路がそのまま向こうの動物園まで見通せた。へえーっ。
まだ工事は完全には終わっていない様子で、改札前の道路が一旦遮断されていた。このまま道路がなくなるのもいいかも。
そんなことより、国立西洋美術館にロンドンのナショナル・ギャラリーから絵がたくさんやって来ていて、このまえ、やっとそれが開いたのだ。とはいえ、これまでのように、好きな時に出かけて行ってチケットを買い、空いていればラッキー、混んでいてもそれなりに臨機応変、見たいように見る、というわけにはいかない。予約、というヤツが必要になって、えへん、私は予約済みなのである。
予約は家人がやってくれた。「オン・ライン」とかは、考えるだけで私には無理。無理だが、これからは、展覧会もあらかじめ予約して見ることが当たり前になるのだろうなあ、なんだかなあ、と思う。とは言え、新型コロナに私共のような老夫婦が罹患すればイチコロナのだから、主催者の配慮には感謝しなければならない。ありがと。
そんなこんなで、予約時間に間に合った。マスク、検温、消毒、ソーシャル・ディスタンス、などクリアして入場。そしたら、いきなり、ちらり、と向こうにクリベルリが見えて、びっくり仰天。クリベルリですぞ!
「あれ」がホントに来ているのか? 来ている! ずいぶん高い位置に掲げられて。
しかし、駆け寄ったりはせず、はやる気持ちをむりやり抑えて、おもむろにウッチェルロから見物を始めた。小品とは言え、ウッチェルロですぞ!
すでにお分かりのように、あとはもう、次々に現れ出てくる名品の数々。ついつい没入させられる。
比較的あっさりとタンノウということをしていたはずなのに、一巡しただけで二時間経っていた。もう一度、クリベルリのところまで戻ろうか、と思ったが、やめた。老夫婦はもうヘトヘトだったのである。
まだ工事は完全には終わっていない様子で、改札前の道路が一旦遮断されていた。このまま道路がなくなるのもいいかも。
そんなことより、国立西洋美術館にロンドンのナショナル・ギャラリーから絵がたくさんやって来ていて、このまえ、やっとそれが開いたのだ。とはいえ、これまでのように、好きな時に出かけて行ってチケットを買い、空いていればラッキー、混んでいてもそれなりに臨機応変、見たいように見る、というわけにはいかない。予約、というヤツが必要になって、えへん、私は予約済みなのである。
予約は家人がやってくれた。「オン・ライン」とかは、考えるだけで私には無理。無理だが、これからは、展覧会もあらかじめ予約して見ることが当たり前になるのだろうなあ、なんだかなあ、と思う。とは言え、新型コロナに私共のような老夫婦が罹患すればイチコロナのだから、主催者の配慮には感謝しなければならない。ありがと。
そんなこんなで、予約時間に間に合った。マスク、検温、消毒、ソーシャル・ディスタンス、などクリアして入場。そしたら、いきなり、ちらり、と向こうにクリベルリが見えて、びっくり仰天。クリベルリですぞ!
「あれ」がホントに来ているのか? 来ている! ずいぶん高い位置に掲げられて。
しかし、駆け寄ったりはせず、はやる気持ちをむりやり抑えて、おもむろにウッチェルロから見物を始めた。小品とは言え、ウッチェルロですぞ!
すでにお分かりのように、あとはもう、次々に現れ出てくる名品の数々。ついつい没入させられる。
比較的あっさりとタンノウということをしていたはずなのに、一巡しただけで二時間経っていた。もう一度、クリベルリのところまで戻ろうか、と思ったが、やめた。老夫婦はもうヘトヘトだったのである。