239 藤村克裕雑記帳 | 逸品画材をとことん追求するサイト | 画材図鑑
藤村克裕雑記帳
藤村克裕

立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。

藤村克裕 プロフィール

1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。

1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。

内外の賞を数々受賞。

元京都芸術大学教授。

『マスク展』を見た(2)
2015-09-10
新館では、仮面が実際にどう使われていたかを示す記録映像が映写されていた。
これも大変親切である。ケース入りの展示だけでは、どうしても仮面が造形物=彫刻に見えてしまう。というか、ピカソやモジリアニのような人々がアフリカの仮面を造形的に“発見”して以来、いつのまにか私たちは仮面本来の役割を忘れてしまうようになった。日本でなら、柳宗悦のような人が“発見”した「民藝」のことも想起できる。そうしたねじれを、現場での記録映像がさりげなく改めさせてくれるのである。仮面を装着した人は“衣装”もつける。そして日常の自分から変身し、精霊とか悪魔とか、ある一定の役割を担うのである。そして、動く。踊ったり、声を出したり、歌ったりする。周囲には人々がおり、リズムをとったり、歌ったり、見物したり、逃げ惑ったり、手伝ったりする。日常の空間が変容するのだ。
コートジボアールのバウレ族の映像を見ていた時、隣に座っていたご夫人たちのグループのなかの一人が仲間につぶやくように言ったのが聞こえた。
「ゆるキャラって、昔からあったのね」
私は不意をつかれて衝撃を受けた。ゆるキャラ…って…。
衝撃が大きすぎて、あとのことをしばらく覚えていない。
「ふなっしー」とか「くまもん」とかの無数の「ゆるキャラ」といわれる精霊たちが現代日本の日常をカッポしている、と思うと世界が別の相貌で感じられる。
我に返ったとき、ご夫人のグループはすでに立ち去っていた。
『マスク展』を見た(1)
2015-09-09
6月6日土曜、東京・白金台の庭園美術館で『マスク展』を見た。
旧朝香宮邸のアール・デコ様式の建築をそのまま生かした企画展の展示を意欲的に展開してきて人々に親しまれている。近年、改修し、また新館を作って、さらに多様な活動ぶりである。今回は仮面の展覧会。
仮面はパリのケ・プランリ美術館の所蔵品とのこと。アフリカをはじめとする世界各地のものが、そんなに数が多いわけでもないのに、十分すぎるくらい堪能できたのは、現物のクオリティーの高さに加えて、独特な建物の内部空間を生かしながらなされた展示・構成の巧みさの故だろう。仮面を保護するための透明なボックスが周囲の光を反射して、いささか煩わしくも感じさせられたが、これはやむを得まい。がまんできないほどではないのだから。

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