藤村克裕雑記帳

色の不思議あれこれ164 2020-02-10

土曜日の遠足 その2

 テニスコートの横を通って行くと、つい笑ってしまいそうになる不思議な形の彫刻があった。ここにあの浦和高校があったことを記念して設置された“モニュメント”だった。作者は柳原義達。想定外のこんなことがあるので、いつもと違う道筋で歩くのは楽しい。遠足の醍醐味。
 タマキンでは「森田恒友展」。予想以上に面白かった。
 森田は、1881年現在の熊谷市の生まれ、というからピカソと同じ年齢だ。20歳の時、東京に出て、中村不折に師事するが、中村不折の留学により小山正太郎の塾へ移り、やがて東京美術学校入学。青木繁や熊谷守一とは二学年下。首席卒業。1914年渡仏。1915年帰国。1922年、春陽会結成。1933年、食道癌で死去。
 最初期のデッサンから最晩年の風景画まで、デッサン、油彩、水墨、木版、挿絵、‥‥、そして文章、と驚くほど多彩な形式を自在に駆使している様子に驚かされた。その器用さだけでなく、この時代にはすでに様々な表現の「様式」を対象化してその都度選択できるようになっていたのだろうか。とはいえ、渡仏後のセザンヌへの傾倒ぶりと、次第に自分のものにしていく様子には、冷静でおられぬ迫力がある。とりわけ、“森田様式”ともいえそうな最晩年の風景画に至る様子は、静かながら大変な迫力を含んでいる。初期の1907年作の「湖畔」、この素晴らしい作品をものしたこの人にして、またこの凄まじいほどの制作量にして、ようやく到達し得たであろう1930年代の作品の持つ意味については、いずれきちんと考えてみたい。
 そんなわけで、ヘトヘトになって京浜東北線・北浦和駅から電車に乗った。幸い座ることができてホッとした。バチが当たりそうなほどの満足感満載の遠足。一万歩軽く突破!
                         

(2月8日、東京にて)
 

「森田恒友」展
●会期:2020年2月1日 (土) ~3月22日 (日)
*会期中に一部展示替があります。
前期:2月1日(土)~3月1日(日)/後期:3月3日(火)~3月22日(日)
休館日:月曜日(2月24日は開館)
●時間:10:00~17:30
●会場:埼玉近代美術館
●観覧料:一般1100円詳細はHPへ
公式HP:https://pref.spec.ed.jp/momas/


ヒヤシンスハウス

●開館日:水・土・日・祝日(10時~15時)
●場所: 埼玉県さいたま市南区 別所沼公園内
●公式HP:http://haus-hyazinth.org/page00-menu.htm


 

藤村克裕

立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。

藤村克裕 プロフィール

1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。

1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。

内外の賞を数々受賞。

元京都芸術大学教授。

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