色の不思議あれこれ131 2019-05-17
このどうしようもない世界を笑いとばせ 福沢一郎展」その1
東京・竹橋の国立近代美術館で福沢一郎の作品群をまとめて見た。
正直、ほとんど期待していなかったが、これが面白かった。
入場後、最初に目に飛び込んできた正面の絵が、即座に前田寛治を連想させた。まず、色彩において。同時におおらかな形状把握において。
とてもいい。
近頃、こういう絵にはほとんどお目にかかれなくなった。もちろん、自分でも到底描けそうにない。
色彩は、明るいベージュからほぼ黒までの茶系の一群に独特な緑(オリーブ色?)が関係して、これは言ってみれば補色どうしなんだけど、その取り合わせがとってもきれいで、お、これはあなどれない、といきなり“用心”させられたくらい。
そして驚かされたのは、形状把握だ。細部にこだわらず、しかし細部のニュアンスをしっかり含んで、たっぷりとおおらかである。このたっぷりさがとても懐かしい。マッスという今や死語に近い造形言語が、ここには確かに息づいている。マッス、と言えば、「塊(かたまり)」の感じのことだけど、福沢の場合、必要以上にゴロンとした重苦しいマッスではなく、伸びやかで気持ちがいい。なので、エルンストに似た、とか言われる最初期の絵柄(確かにそうなのだが)がどうであれ、描かれているものの意味やものどうしの関係の意味や無意味、シュルレアリスムのことなどをほとんど考える必要もなく、ただ楽しんでいる自分を見出していたのである。
つづく→
立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
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