色の不思議あれこれ105 2018-09-13
ゴードン・マッタ=クラーク展にまた行ってきた その2
歓声の中を登場してくるマッタ=クラークは、段ボール製であろうか、箱を一つ抱えている。その箱を床において、一つの面を切り開くと、中には小さな家が入っているのが見える。模型? オモチャ? みんな大喜び。
マッタ=クラークは床に接した以外の全ての面を開いて床に広げていく。どの方向からも小さな家がしっかり見えるようになる。小さな家のご披露だ。
ご披露が終わると、今度はノコギリとナイフでその小さな家を縦に切り始める。またまたみんな大喜び。すっかり切り終わると、マッタ=クラークはそのすぐ横のところをもう一回切断していく。そして、薄くスライスできた部分をつまんで取り出して、残りはみんなにあげる、とか言って退場していく(なにせ私の英語はお猿以下)。どうやら家の形をしたケーキだったらしく、ペーパータオルらしきを持った観客が残りのケーキをとりに集まってくる。みんな本当に大喜び。
そんなマッタ=クラークの“出し物”であった。
もちろん、『スプリッティング』を踏まえてのこと。みんな『スプリッティング』を知っているわけだ。
『スープとタルト』の映像の中では、フィリップ・グラスとかイヴォンヌ・ライナーとかリチャード・セラとか、私でも知っている(と言っても向こうは私を知らない)人や、知らない人が全部で15、6人登場してきて“出し物”をやっていた。観客の中には靉嘔(きっとまちがいない、と思う)の姿も写っていた。みんなすごく楽しそうで、羨ましいくらい。
今回の「ゴードン・マッタ=クラーク展」に出品された映像は全部合わせると、ほぼ8時間になる。全てを見るのは結構大変だったが、どれもとても面白かった。二度、三度見たものもあるから、8時間どころじゃない時間を映像の前で過ごしたわけだ。これらの映像とドローイングや写真や各種資料と相乗させると、さらに面白くなる。まるでマッタ=クラークの大掛かりな作品がここに蘇ってくるようだ。これが作品の力。現物そのものは、もう地上のどこにもないのに、ありありと蘇るのである。
こうした作品の力にもっともっとあやかりたいものだが、会期がもう押し迫ってきてしまった。9月17日(月・祝)まで、東京・竹橋・東京国立近代美術館。
2018年9月11日 東京にて
ゴートン・マッタ=クラーク展は、9月17日まで!
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
会期:2018年6月19日(火)~ 2018年9月17日(月・祝)
公式:http://www.momat.go.jp/am/exhibition/gmc/
立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
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