色の不思議あれこれ046 2016-02-12
『一遍聖絵』を見た(1)
11月6日、晴天。家人と小田急線に乗って藤沢に行った。時宗の総本山、遊行寺(清浄光寺)の宝物館が改修されて、『一遍聖絵』全12巻が揃って特別に公開中だ、とラジオ・テレビから情報を得たからだ。
快速急行で新宿から一時間弱。は、速い。
駅前のそば屋で軽く腹ごしらえをして、徒歩で遊行寺に向かう。石畳に整備された道を行き、境川にかかる橋を渡ると遊行寺。境川といえば、若林奮『境川の氾濫』をどうしても思い出してしまうが、それはほどほどにする。
境内にまばらな人。しめた、と宝物館を目指すが、やはり順番待ちの列ができていた。とはいえ、10人程。すぐ後ろについて並ぶ。
入場制限をしているのだった。会場から10人出たのを確認して、10人入れてくれる。非常に良心的だ。しばらく待っていると、10人の方どうぞ、ということで、私たちの前で終わってしまった。
それで、つい、いままで一番並んだ展覧会は何か、という話を家人と始めてしまった。私が東京国立博物館での「清名上河図」の時、と言うと、家人は国立西洋美術館「バーンズコレクション」の時、と言う。東京国立博物館「興福寺・阿修羅像」の時もすごかったが、うまくフィギュアをゲットできた、という話にもなる。それらに比べれば、どうということもない。すぐに、私たち10人の番になって、建物に入れてもらえた。階段で、少し待たされたが、会場に入ることができた。
すごいぞ。
ホントに全ての巻があった。ただし、第7巻は東京国立博物館所蔵なので、ここにあるのは、江戸時代の模本ということだ。オリジナルの第7巻はこの特別公開の時期に合わせて東京国立博物館で展示されているらしい。また、すべて拡げて見せているのではない。見ることができる場面は限られている。しかし、例えば私が持っている中央公論社版『日本の絵巻20・一遍上人絵伝』の図版と比べれば、クリアさが違うし、色も鮮明で、見にきてよかった!と素直に感激させられる。
感激はさておき、詞書が読めない。教養というものがないのだ。少し勉強してみたことはあるが、身に付くことはなかった。絵巻物や書をみると、いつも読めるようになりたい、と思う。が、ひたむきさが足りない。
つづく
立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
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