藤村克裕雑記帳

色の不思議あれこれ083 2017-12-04

「古代アンデス文明展」をみた その1

 ぼーっとしていたら、あれあれ11月も終わってしまったではないか。で(?)、上野・国立科学博物館をめざした。夏頃に「古代アンデス文明展」のチラシを見つけて楽しみにしていた。前売り券だって買ってあった。この調子でぼーっとしていると、あっという間に会期終了になってしまうにちがいない。久しぶりの外出だった。
 入場後に入手した「会場マップ」を見ると、時代順に6つに区分された構成になっている。加えて、最初に古代アンデスについての概説を映像とパネルで示し、終わりに映像シアターを設け、第二会場で発掘の様子など学術的な取り組みを示している。そしてショップ。6つの区分は以下の通り。第一章:アンデスの神殿と宗教の始まり=カラル遺跡・コトシュ遺跡、第二章:複雑な社会の始まり=チャビン文化・クピスニケ文化、第三章:さまざまな地方文化の始まり=モチェ文化・ナスカ文化、第四章:地域を越えた政治システムの始まり=ティワナク文化・ワリ文化・シカン文化、第五章:最後の定刻・チムー王国とインカ帝国、第六章:身体から見たアンデス文明=頭骨とミイラ、さらに“通路”を使ってスペインによる征服=インカ帝国滅亡についても簡単に触れている。
 私は第二章あたりでもうヘトヘトに疲れてしまって、あとは例によって貧乏性で頑張りぬいたのだった。
 白状するが、古代だけでなくアンデスのことを殆ど知らなかったのだ。知っていたのは、ジャガイモの原産地であるとか、ケーナで奏される「コンドルは飛んで行く」のとかメロディとか、ナスカの地上絵とか、マチュピチュとか、ごく一般的な事柄。あと、建築家の原広司氏が行なったあの集落調査=『住居集合論』で「離散型集落」と命名されていたこととか。であるから、いくつかの文明の区別などとてもできなかったし、地理もあやふやだった。マヤとインカがゴチャゴチャになっていたし。
 時々何人かの知り合いから、ナスカの地上絵を見てきた、とか、マチュピチュに行ってきた、とか聞くことがあった。「あのな、トウモロコシやけど、黄色くないねんで。いろんな色のがあるねん。ほんまにびっくりしたわ」と始まった陶芸家・吉川さんのアンデスの旅の話などは本当に臨場感たっぷりでじつに羨ましかった。だからといって、なにか調べる、というようなこともなかった。
 つまり、予備知識ゼロ。そこに、大量の情報が押し寄せたのだ。すぐに疲れてしまったのもやむをえまい。おまけに、展示物は妙に生々しくて、面白すぎる。つい没入してしまい、おのずと疲れてくる。あ、疲れたことばかり書いている。
つづく→

 

 

藤村克裕

立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。

藤村克裕 プロフィール

1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。

1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。

内外の賞を数々受賞。

元京都芸術大学教授。

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