色の不思議あれこれ048 2016-03-14
魔除けの展覧会・文化学園服飾博物館(1)
文化学園服飾博物館で12月17日から2月17日まで開催された展覧会、『AMULETS 魔除け 身にまとう祈るこころ』展が実に面白かった。例によって、見に行けたのが会期終了間際だったので、会期中にここで紹介できなかった。読んでいただいている皆さんにはまったく申し訳ない。
過日、東京・京橋の「LIXILギャラリー」で「背守り」の展覧会があって、それも強い印象を残してくれたが、この「魔除け」展もまた、日頃忘れ去っている大事なことを思い起こしてくれる素晴らしい展示だった。
文化学園は言わずと知れた服飾の様々を教える学校。学生たちのための参考事例を多数コレクションしており、それをもとにその都度テーマ設定して展覧会を構成し、学生たちだけでなく、一般にも紹介している。地味だがいつもとても面白い。
私のような者が「服飾」をいうのは、いかにもミスマッチだ。しかし、1980年頃だったか、ルドフスキーの『みっともない人体(からだ)』という本が評判になって、わたしも読んだ。そして、目を開かれた。服飾は奥深い。とはいえ、オシャレには相変わらず全く興味なく、家人がどこかのバーゲンで買ってきてくれたものを順番に身につけている。
ダイエットとか筋トレとかにも興味がない。とはいえ、女装にはちょっと興味があった。学生時代、自画像を描いて、それに“お化粧”してみたことがあるが、じつに気持ちの悪いものになった。それで、深く追求するのは断念している。また、あの劇的に変化できるらしい「×××ップ」のCMなどみると、思わず心が動く。ペットボトルの蓋を集めたりするのが大好きなメガネ姿の経済評論家が「×××ップ」に挑戦中、とか聞くと、なんだか負けちゃったような気がするのは否めない。あ、本題に戻る。
服は、第二の皮膚として、保温とか、硬いもの尖ったものとかから身を守ったりする役割がある。ところがそれだけにとどまらない。人知の及ばない「魔物」に文様、色、素材で対抗したり、「神聖さ」保持したりの役割も負う。それを明らかにしようというのがこの展覧会のねらいだ。
文様・色・素材も、今や「装飾」と化しているといえるのだが、この展覧会をみると、じつは「装飾」には実に深いところからの出自があるし、いまなおその“なごり”をとどめていることが分かる。かつて、文様も色も素材も命がけの願いを込めて用いられていたようだ。日本を含むアジア・アフリカなど各地域、各民族が身に纏ってきた事例を見ると納得させられた。
つづく
立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
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