色の不思議あれこれ041 2015-12-26
燕三条市に行ってきた(2)
次にリサイクルの「北興商事」。じつは、この「工場の祭典」というイベントを見学したい、と思ったのは、この工場で作ったらしい自動車をプレスした直方体の写真がパンフレットにあったから。それが、一時一世を風靡したフランスのセザールの作品みたいでかっこよかったからだ。自動車が直方体になるのを見学できるかもしれない、と思ったのだ。残念ながら、それは危険すぎるそうで見せてもらえなかった。とはいえ、たくさんの使用済みの缶がプレスされて直方体になっていく現場は見学できた。分別されたアルミ缶が音をたてて床下の機械に放り込まれ、大きすぎるくらいのそのプレス機が動き出すのだが、動き出す前に“ピーヒャラピーヒャラ…”とチビまる子ちゃんのテーマが鳴り出す。それが作業員の安全確認の注意を換気しているとのことである。あの曲だから気分も明るく保持できるのかもしれない。数十秒するとプレスされた直方体が地下の装置から地上へ顔を出す。これが繰り返されるわけである。三方向からのプレス。リサイクル工場、スクラップ工場はなかなか見学させてもらえないという。私もはじめて見学した。この工場の英断はすばらしい。搬入されてさらに丁寧に分別され、こうしてリサイクルのために一定の加工が施されている様子を目の当たりにすると、資源のことを改めて考えさせられる。ギロチンと呼ばれる大きな機械や焼却炉、つみあげられた自動車の車体をはじめ多くのリサイクル素材を目の当たりにして、感動してしまった。見学者のための係のひとの説明も心がこもっていて、現場の使命感や熱意がひしひしと伝わってきた。都市鉱山という言い方がある。しかし、例えば携帯電話に使われるレアメタル。“ガラケー”ではともかく、スマートフォンになってくると、もう少量のレアメタルを取り出すためにコストがかかりすぎてしまってワリにあわない、だから、スマートフォンはリサイクルされない、という話を聞くとじつに複雑な思いがする。パソコンの基盤などでも同様。旧式のものはともかく、現在行き渡っている機種では、金もプラチナも超極薄で取り出しにとてもコストがかかるそうで、いつまで都市鉱山という言葉が生き残るか、もう正直分からない、と説明された。加工技術が進んで、レアメタルの分量が少なくて済むようになった分、同量のレアメタルを取り出すためにはコストがかかりすぎる、というのである。うーん。“新調する方が安い”となれば、だれもリサイクルに手を出さなくなるかも。それは、どうなんだろうなあ…、といろいろ考えさせられた。
その次に訪れたのは、「内山農園」。ここは、金属加工工場ではないが、今回の催しに参加していたので、見に行った。米の収穫は既に終わっていて、見学できたのはビニールハウスでのイタリアン料理のための素材野菜栽培の様子。完全無農薬で育てている、との事で、見た事のない野菜の料理法や栽培上の失敗の話などいろいろ教わったが、省略させていただく。こうして、若い人々がいろいろ意欲的にチャレンジしているのに触れると、ポンコツとはいえ当方も元気がもらえるような気がしたのだった。
つづく
立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
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