色の不思議あれこれ042 2015-12-26
燕三条市に行ってきた(3)
次に「マルナオ」に行った。ここは、見学客でごったがえしていてびっくりさせられた。グループでやって来て見学している人々が多いようだった。この会社では木の箸などを作っている。その様子をガラス越しに見学できる。普段から見学客やワークショップ参加者を受け入れることも想定して作られたモダンな建物。ショップの品揃え。デザイン。地方でもの作りを展開するための工夫が随所に感じられた。
次に訪れた「三条製作所」は、伝統的な手作りのカミソリを作っている工場=こうば。実際の仕事場に入れて下さって、ひとつひとつ本当に丁寧に説明して下さった。裸電球の灯る仕事場は、昔ながらの様子を維持しつつ、今も日々の仕事の現場である事を十分過ぎるくらい示していた。昔は日本刀も作っていたとの事。たたらの鋼と鉄との違いを分かりやすく説明して下さったり、「ふいご」の蓋を開けて中の構造を見せて下さるなど、こうした仕事を絶やさぬためにがんばっておられるご主人の熱意がいたいほど伝わってきた。
その隣にあった「諏訪田製作所」は爪切りで有名な会社。会社入り口のオブジェで、まずギョギョっとさせられ、ギャラリー入り口に掲げられている書の作品にも驚かされた。会社のイメージ作りに力を入れている様子がよく分かる。なので、大変あか抜けている。ガラス越しに職人さんたちの仕事が見学でき、そのコースも実にうまく設定されている。仕事内容を説明するための“中継”映像や文字情報のプレゼンテーションも心憎い。見学者は、完成品を展示しているギャラリーを経て、最後の微調整による仕上げ、研磨…と実際の制作過程の逆の順序をたどって板の形状の素材の段階に至る。それが、効果的だ。ガラスがきれいに磨かれている事はもちろん、採光や照明に至るまで、見学者への気配りが大変細やかだった。道を挟んだショップも無駄なく、しかし贅沢に設定されており、ネール・サロンも設けられているのには舌を巻いた。
もっともっといろいろ訪れたかったが、時間切れ。これで精一杯、ヘトヘト。すごく面白かった。このイベントの主催者に敬意を評したい。とはいえ、見学先の移動の途中、いわゆる“シャッター商店街”も通ることになった。そんな時には、私のような者も複雑な気持ちにならざるをえなかった。ここでも、郊外には大きなショッピングセンターがたくさんの人を集めているに違いない。日本中で同じ事が深刻に進行しているのだろう。うーむ。
(2015年10月4日、東京にて)
立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
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