藤村克裕雑記帳

色の不思議あれこれ185 2020-09-16

アーティゾン美術館に行ってきた その2

先のヴェネチア・ビエンナーレでの日本館における展示報告のような趣旨。  
 展示に至る各種資料とともに、日本館の展示室が実物大で再現され、展示もそっくりそのまま再現している(ようである)。詳細な説明は省くが、これも想像していたより、はるかに面白かった。
 とりわけ、綿密に作られた曲をコンピュタ制御で自動演奏している12本のリコーダーからの音が、座ったりもできる巨大な“風船”と連動していて、どっこいしょ、と座ったりすると(“風船”に圧が加わると)リコーダーの音の大きさが変化するのには笑ってしまった。ハイテクとローテクとが愛嬌良く混在している。
 4階会場には、かつてのブリジストン美術館でまみえることができた収蔵作品群からの展示に加えて、収蔵作品群によるテーマを定めた特集展示が配されている。今回は、かつてのヴェネチア・ビエンナーレ日本代表作家群の中から棟方志功、山口長男など6作家の作品の展示、「印象派の女性作家たち」と銘打った展示、クレーの25点に及ぶ特別展示、という3種類の特集。あと、円山応挙なども。
 

どの作品も、ごく間近でしげしげと観察できるように配慮されているのが嬉しい。
 しかし、1960年代末、高校の修学旅行の自由時間に訪れて以来、繰り返しこの美術館を訪れてきた者にとっては、セザンヌはあの壁、モネはあの壁、‥‥、というように、いつも「そこ」にあった“定位置”が失われて、なんだか故郷が無くなってしまったような気もした。
 ゆっくり見物しているうちにとてもお腹が空いてきた。一階のカフェで軽い食事をした。そのあと銀座までてくてく歩き、何箇所か寄り道をして帰路についた。風が涼しくなっていた。
 帰宅してテレビをつけたら、お相撲が中継されていた。照ノ富士の優勝からもう二ヶ月経っちゃったんだ。はやい! はやすぎる!!
                    (2020年9月15日、東京にて)

●「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子
鴻池朋子 ちゅうがえり」
・会期 : 2020年6月23日[火] - 10月25日[日] ※会期変更

・開館時間 : 10:00 - 18:00( 祝日を除く毎週金曜日は20:00まで /当面の間、中止)*入館は閉館の 30 分前まで

・休 館 日 : 月曜日 (9月21日は開館)、9月23日
アーティゾン美術館は日時指定予約制です。当日チケットの販売もしておりますが、ご来場前に「ウェブ予約チケット」をご購入いただくことをお願いしております。

企画展開催中のウェブ予約チケットと当日チケット(窓口販売)では、チケットの料金が異なりますので、展覧会のページにて入館料をご確認ください。


・会 場 : アーティゾン美術館 6 階展示室

・公式HP:https://www.artizon.museum/collection-museum/exhibition/detail/2

●画像:上:《宇宙の卵》安野太郎
    下:《狼頭巾》鉛筆 紙 鴻池朋子


藤村克裕

立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。

藤村克裕 プロフィール

1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。

1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。

内外の賞を数々受賞。

元京都芸術大学教授。

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