色の不思議あれこれ184 2020-09-16
アーティゾン美術館に行ってきた その1
ブリジストン美術館が入っていたビルが建て替えになって、美術館の名称もアーティゾン美術館にかわって久しい。今日、やっと見物に行ってきた。
入場するには、検温や手指のアルコール消毒だけでなく、時間指定の予約が必要だからだろうか、観客は少なめで、ゆったり、ゆっくり、巡った。
係りの人に促されて6階に足を踏み込むと、とても大がかりな『鴻池朋子 ちゅうがえり』展。
この展示は、様々なメディアに取り上げられていたが、それらの情報から、なんだか私は、敬遠したくなるような印象を得ていて、正直期待していなかった。ところが、これが、とても面白かった。現場と実物を実見しなければダメだ、ということを改めて学んだ次第。
入り口から奥へと見えるところに、動物の毛皮が多数、ぶら下げられている。鼻の穴のところをフックに引っ掛けて吊るしてある。ちょっと痛々しい感じを否めない。近寄ってよく見ていくと、足部や頭部などに、他の素材で細工されていたり、造形物が組み合わされていたりしている。毛皮と毛皮との間には編み物らしき小鳥の姿がライトからの光を浴びて、壁に影を落としている。
こうした細部に思わず知らず誘導されて分け入ってしまっている。まんまと“鴻池ワールド”に参入させられてしまっている自分に気づくことになった。そしてその事態を肯定的に認めてしまっていた。
とても繊細でありながら、力技もためらわぬ構築力ゆえだろう。
次々に現れでてくる作品の数々。
ここには圧倒的な手数がある。これらの手数を支えるために、どれだけの集中を要するか。たやすい取り組みではないはず。その“本気度”が伝わってくる。こうなるともう、つべこべ言わず“鴻池ワールド”に浸り切ってしまうのが良い。
会場中央には工事用のタンカンでスロープが大きく組み立てられ、その下、その上、その内側、その周囲、と、実に効果的に利用し尽くしている。並みの構成力ではない。途中過程でなされたメモ的なドローイング類、各種写真類も組み合わさって、説得力がより増している。
映像作品も音(=声、歌)も実に面白く見た(聴いた)。
5階会場では、『宇宙の卵』展。
画像上:オオカミの毛皮 鴻池朋子
画像下:《ツキノワ川を登る》鴻池朋子
つづく→
立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
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