色の不思議あれこれ183 2020-08-17
梅雨が明けて その2
さらに、ヒロシマ。そして、ナガサキ。
「フェイスブック」に峠三吉の『原爆詩集』を一冊分、丸ごと打ち込んで投稿している人がいた。敬意を表して全部読んだ。中学生の時以来だった。
同じく「フェイスブック」に原爆投下の十年前のヒロシマ市街の日常を撮影した映像の投稿をそのままさらに投稿している人がいた。
私のような呑気な者でさえ、この時期になると、様々なことを考える。
もう一つ。
涼を求めて入った本屋で、会田誠の小説『げいさい』を見つけて、買って帰ってざっと読んだ。美大・芸大受験の話だ。それなりによく書けていると思う。よく書けているとは思うし、「クロさん」とはきっと「宮下さん」のことだろう、とかの裏読みの“楽しさ”もある。しかし、やはり強く感じたのは、美大・芸大受験の制度がこの人に負わせた深い傷のようなものだ。
同じ制度は今も続いている。私も受験生だったし、芸大生だったし、一時期は予備校で教えていたことがあったし、大学で教えてもいた。つまり、当事者だったのである。
芸大については、何年か前に「最後の秘境」とかなんとか言って、面白おかしく芸大生の“生態”を書いた本があって、知り合いで回し読みして、素直に笑った。
今も『ブルー・ピリオド』というマンガが話題である。予備校での受験勉強を経て現役合格し芸大生になった主人公が今後どうなっていくのか、今の若い人の様子の一端が知りたいこともあって、私も読んでいる。作者の山口つばさというひとは、ネットなどでの写真では被り物をしていてお顔がわからない。わからなくていいが、芸大の油画科出身というから“内情”には詳しかろう。
芸大油画科出身のマンガ家といえば、私たちの世代では一関圭。日本の油画の創成期の画家たちや浮世絵師たちの物語を描いてきている。よく調べて、とても巧みに描いていると思う。ウチにも何冊かとってあるはずだ。
同じマンガでも、時代なのか、随分ちがってきたものだ、と感慨深い。
そんなこんなで、今日も暑すぎる日が続いている。くれぐれもお気をつけて。
(2020年8月17日 東京にて)
画像
上:「原爆詩集」初版 峠三吉著 (現在は岩波文庫から出版されている)
下:「げいさい」会田誠 文芸春秋
立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
藤村克裕 プロフィール
1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
内外の賞を数々受賞。
元京都芸術大学教授。
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