

小杉弘明氏による画材のトリビアコラムを連載します。
小杉弘明 プロフィール
1954年 大阪出身。
1977年 大阪府立大学 工学部応用化学科卒。
元ホルベイン工業株式会社 技術部長。
現カルチャーセンター講師。
混色という魔界 Ⅰ
2025-02-21
私、絵を習ってる先生に言われるんです。「あたなは混色が下手だから、絵がいつも濁っている。もう少し混色の勉強をしなさい。」って。だから混色の勉強をしにきました。…・これは私のやっている基礎講座に来られた生徒さんからよく聞く話である。これに対して「混色とはそもそも汚い色を作る作業です。混色が下手と言うより並べ方がうまくないと言うことでしょうね。」と言うと、たいていの人は驚いたような顔をする。混色は絵を描く上において欠かせない行為である。しかし、色の混色ほど誤解や勘違いの多い作業はない。色と色を混ぜ合わせる混色の本質は、①濁った色をつくり、②人の目を欺く作業であるということだ。マンセルの色相環は皆さんもよくご存知かと思うが、可視光のうち最も波長の長い赤と最も短い紫を結びつけて無理矢理円形にしたものである。円の外側に最もビビッドな色が並んでいるが、これを見るだけでも色と色を結ぶ直線は円弧より内側を通る事になるので、彩度が下がるだろう事は容易に理解されるに違いない。