小杉弘明氏による画材のトリビアコラムを連載します。
小杉弘明 プロフィール
1954年 大阪出身。
1977年 大阪府立大学 工学部応用化学科卒。
元ホルベイン工業株式会社 技術部長。
現カルチャーセンター講師。
「エマルジョンと言う勿れ ②」
2024-03-05
今回はアクリル樹脂そのものの話をしたい。アクリルで連想されるものといえば写真の通り、セーターなどに使われるアクリル繊維、美ら海水族館や海遊館など水族館の大きな水槽、そして絵具などに使われる接着剤である。極めて透明性が高く、耐久性が高いのが様々な用途で使われる理由だろう。大きな水槽はアクリル板を何層にも重ねて接着剤で接着したものだそうだ。光透過性が低ければジンベイザメをクリアに見る事ができないし、そもそもあれだけ多量の水を受け入れて壊れることもないので、強度が極めて高い事もわかるだろう。ちなみに水槽に使われるアクリル樹脂が耐水性にすぐれていることは言うまでも無いことだ。少しでも水に溶けるようなものならば、今頃、魚たちは昇天しているだろう。また、アクリル樹脂は屈折率がかなり水に近い。空気の屈折率が1.00で水が1.33だから、光は水に入るときに折れ曲がる。風呂に入ったときに手が曲がって見えるが、これはこの屈折率の違いによる。従って、水槽もできるだけ曲がりの少ないものの方が自然に見える。ガラスはその組成によってたくさんの種類があり、それぞれに屈折率が異なるが1.4~2.0くらいで、アクリルは1.49だから、相当に水との屈折率差が小さい樹脂だとわかる。
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