

小杉弘明氏による画材のトリビアコラムを連載します。
小杉弘明 プロフィール
1954年 大阪出身。
1977年 大阪府立大学 工学部応用化学科卒。
元ホルベイン工業株式会社 技術部長。
現カルチャーセンター講師。
混色という魔界 Ⅱ
2025-03-24
混色について本格的な話を始める前に、どうしても書いておきたいことがある。油絵を描く人は描き終わると筆をブラシクリーナーで洗った後、石鹸を使って水洗いするのが常だと思う。中にはブラシクリーナーで洗うだけなんて人もいるが、筆洗器の中で洗うというのは洗濯物をずっと同じバケツの中で洗い続けるのと同じだ。顔料は沈降するものの、ブラシクリーナーに溶けた乾性油濃度はどんどん上がっていくので、筆には乾性油がたくさん残り、後日固まって筆は使い物にならなくなる。たいていの人はこれを知っているだろう。ところが、水彩画を描く人の場合、使い終わった筆を石鹸洗いする人は一割に満たない。水洗いするだけで充分と思っているようだ。ところが、実際には有機顔料を使った絵具が多くなったこともあって、水洗いだけでは色が残ってしまう。画像の通り、水洗いした後でも石鹸洗いすると、汚れがたくさん残っている事が多い。筆が汚れているのに「混色で綺麗な色が出ない」などというのはそもそもナンセンスではないだろうか。水彩筆であっても石鹸洗いして乾かして欲しい。
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