画材のトリビア
小杉弘明

小杉弘明氏による画材のトリビアコラムを連載します。

小杉弘明 プロフィール

1954年 大阪出身。

1977年 大阪府立大学 工学部応用化学科卒。

元ホルベイン工業株式会社 技術部長。

現カルチャーセンター講師。

<油売ってました Ⅰ>
2026-02-19
 「油を売る」という慣用句はご存知の通り、あまり良い意味では使われない。例えば関西弁なら、「あいつ、なかなか帰ってけえへんけど、またどっかで油でも売ってるんと違うか。」のように使う。仕事や用事の最中に、無駄話をして時間を浪費する事を指すわけだが、もともとは江戸時代に油売りが客の容器に柄杓で油を移すのに時間がかかり、その間に客といろいろな話をしたことが元になったそうだ。私は今更ながらだが、在職中、絵具屋の技術員として働き、主に油絵具や画用液に携わってきたので、正に油を売ってきた人間である。その昔、画家が絵具を作っていた時代は別として、絵具屋が絵具を作って画家に提供する時代になると、そもそも油絵具にはどんな油が使えるのか画家自身がわからなくなってしまった。もちろん、アマニ油(リンシードオイル)やケシ油(ポピーオイル)なんて油が使えることはご存知かもしれないが、油の種類は山ほどあって、どれが使えてどれが使えないのかがわからないというのが実情だろう。今回は油絵具の油について、正しく「油を売る」つもりである。