色彩ノ事典
西洋の色と日本の伝統色のコラム。色に関するエピソードを短くまめた読み物です。
クリムソンレーキ・Crimson Lake
レーキとは染料から顔料をつくること。カーマインと同じくケルメスを語源にした深紅色の染料からつくられた。
カーマインよりやや紫味が強い印象だが、ほとんど同様に扱われる場合もある。
乾燥が遅いので厚塗りはできないが、透明かつ滑らかな質感で仕上げ塗り(グレーズ)の美しさに定評がある。
カラーコード:#BC1A3D
R:188 G:26 B:61
カーマインよりやや紫味が強い印象だが、ほとんど同様に扱われる場合もある。
乾燥が遅いので厚塗りはできないが、透明かつ滑らかな質感で仕上げ塗り(グレーズ)の美しさに定評がある。
カラーコード:#BC1A3D
R:188 G:26 B:61
ローズマダー・Rose Madder
ペルシャ原産のセイヨウアカネは人類が最も古くから愛用した色料であった。ツタンカーメンのミイラの包帯もアカネ(Madder)で染められ、ポンペイのフレスコからルノワールなど多くの画家たちが支持してきた赤の代表色。
現在ではアカネから化学合成されたアルザリン系顔料にほぼ置き換わっている。
現在ではアカネから化学合成されたアルザリン系顔料にほぼ置き換わっている。
カーマイン・Carmine
ヨーロッパ原産のケルメス・カイガラムシから抽出された鮮やかな深紅色は、聖母マリアの衣など尊い血を表現するときにも使われた。
古より毛織物の高級染料であり、色名の語源になった。その後、堅牢で鮮やかな南米産のコチニール・カイガラムシが席巻した。フランドルの画家たちもこの赤を多用した。
カラーコード:#d70035
R:215 G:0 B:53
古より毛織物の高級染料であり、色名の語源になった。その後、堅牢で鮮やかな南米産のコチニール・カイガラムシが席巻した。フランドルの画家たちもこの赤を多用した。
カラーコード:#d70035
R:215 G:0 B:53
ヴァーミリオン・Vermilion
天然の硫化水銀を中国では辰州湖南省で産出したので辰砂(しんしゃ)、英語でシナバー(cinnabar)という。ヴァーミリオンとは人工の硫化水銀(銀朱)のこと。「マティスの赤」で知られる。日本では朱、先史時代より神聖な色であった。水銀は毒性があるので近年は有機顔料を使うが発色では銀朱にかなわない。
カラーコード:#ea553a
R:234 G:85 B:58
カラーコード:#ea553a
R:234 G:85 B:58
黄櫨染・こうろぜん【kourozen】
黄赤色。黄櫨とは、櫨(はぜ)の幹の木心部より抽出した黄に蘇芳の赤を加えた黄赤を指す。黄櫨染は太陽の輝く赤を象徴し、黄櫨染御袍(ごほう)は古代より天皇が重要な儀式に着用した束帯装束である。天皇以外の誰も着用することができない禁色(きんじき)であった。製法が難しいので再現性は低い。
R:214 G:106 B:53
#d66a35
R:214 G:106 B:53
#d66a35
鬱金色・うこんいろ【ukoniro】
鮮やかな黄色。東南アジア原産のショウガ科ウコン属の多年草。その根茎を煮て乾燥したものを粉末にして利用する。黄色の染料のほかにも香辛料(ターメリック)、薬用(止血、健胃薬)などが知られている。防虫効果もあり木綿に染めて古美術品等を包んだりする。現在も沢庵漬けやチーズ等の着色に使われている。
カラーコード:#fabf14
R:250 G:191 B:20
カラーコード:#fabf14
R:250 G:191 B:20
群青色・ぐんじょういろ【gunjyouiro】
深い青色。群青は藍銅鉱(アズライト)を粉砕してつくられる。マラカイトと同時に産出されることが多い。岩群青と呼ばれ日本画における青の代表的な顔料。障壁画では狩野派などが金箔と対照させて鮮烈な画面をつくりあげた。瑠璃(ラピスラズリ)の流入以前に日本ではすでに群青の優れた表現が存在した。
カラーコード:#4c6cb3
R:76 G:108 B:179
カラーコード:#4c6cb3
R:76 G:108 B:179
色彩ノ事典【参考文献】
参考文献
・永田泰弘監修『新版色の手帖 色見本と文献例でつづる色名ガイド』小学館 1986
・城一夫著『色の知識Color Museum in the World 名画の色・歴史の色・国の色』青幻舎 2010
・(財)日本色彩研究所編 福田邦夫著『ヨーロッパの伝統色 色の小辞典』読売新聞社 1988
・(財)日本色彩研究所編 福田邦夫著『日本の伝統色 色の小辞典』読売新聞社 1987
・吉岡幸雄著『日本の色辞典』紫紅社 2000
・吉岡幸雄著『源氏物語の色辞典』紫紅社 2008
・徳井淑子著『色で読む中世ヨーロッパ』講談社選書メチエ364 講談社 2006
・大岡信編『日本の色』朝日選書139 朝日新聞社 1979
・フランソワ・ドラマール&ベルナール・ギノー著 柏木博監修『色彩?色材の文化史』知の再発見双書132 創元社 2007
・ハラルト・キュッパース著 富家直/柏谷美代共訳『色彩アトラス 5500色:分類記号と混色ガイド』美術出版社 1988
・ヨハネス・イッテン著 大智浩訳『ヨハネス・イッテン 色彩論』美術出版社 1971
・ホルベイン工業技術部編『絵具の事典』中央公論美術出版 1996
・ホルベイン工業技術部編『絵具の科学』中央公論美術出版 1990
・ホルベイン工業技術部編『絵画材料ハンドブック』中央公論美術出版
・『日本の伝統色THE TRADITIONAL COLORS OF JAPAN』PIE BOOKS 2007
・アンヌ・ヴァリション著 河村真紀子+木村高子訳『色 世界の染料・顔料・画材 民族と色の文化史』マール社 2009
・ルドルフ・シュタイナー著 西川隆範訳『色と形と音の瞑想』風濤社 2001
・永田泰弘監修『新版色の手帖 色見本と文献例でつづる色名ガイド』小学館 1986
・城一夫著『色の知識Color Museum in the World 名画の色・歴史の色・国の色』青幻舎 2010
・(財)日本色彩研究所編 福田邦夫著『ヨーロッパの伝統色 色の小辞典』読売新聞社 1988
・(財)日本色彩研究所編 福田邦夫著『日本の伝統色 色の小辞典』読売新聞社 1987
・吉岡幸雄著『日本の色辞典』紫紅社 2000
・吉岡幸雄著『源氏物語の色辞典』紫紅社 2008
・徳井淑子著『色で読む中世ヨーロッパ』講談社選書メチエ364 講談社 2006
・大岡信編『日本の色』朝日選書139 朝日新聞社 1979
・フランソワ・ドラマール&ベルナール・ギノー著 柏木博監修『色彩?色材の文化史』知の再発見双書132 創元社 2007
・ハラルト・キュッパース著 富家直/柏谷美代共訳『色彩アトラス 5500色:分類記号と混色ガイド』美術出版社 1988
・ヨハネス・イッテン著 大智浩訳『ヨハネス・イッテン 色彩論』美術出版社 1971
・ホルベイン工業技術部編『絵具の事典』中央公論美術出版 1996
・ホルベイン工業技術部編『絵具の科学』中央公論美術出版 1990
・ホルベイン工業技術部編『絵画材料ハンドブック』中央公論美術出版
・『日本の伝統色THE TRADITIONAL COLORS OF JAPAN』PIE BOOKS 2007
・アンヌ・ヴァリション著 河村真紀子+木村高子訳『色 世界の染料・顔料・画材 民族と色の文化史』マール社 2009
・ルドルフ・シュタイナー著 西川隆範訳『色と形と音の瞑想』風濤社 2001
江戸紫・えどむらさき【edomurasaki】
青みがかった紫。やや赤系の京紫に対して江戸で流行った紫色をさす。江戸歌舞伎の十八番「助六」が締める病鉢巻きの色。武蔵野に自生していた紫(ムラサキ)より抽出した紫を江戸紫と称したという説もあるが、江戸時代には高価な紫根に替わって蘇芳(すおう)で染めた似紫(にせむらさき)も登場した。
カラーコード:#745399
R:116 G:83 B:153
カラーコード:#745399
R:116 G:83 B:153
胡粉・ごふん【gofun】
白色。瀬戸内海沿岸で採取される天然イタボカキの貝殻を数年屋外に晒して粉砕し精製する。ホルベイン工業(株)では硬いハマグリを原料にする。胡とは中国の胡の国に由来するが、古代の胡粉は鉛白のことであり人体に有害であった。室町時代より貝殻を使用するようになったが、貝殻を白色顔料にするのは日本だけである。
カラーコード:#fffffc
R:255 G:255 B:252
カラーコード:#fffffc
R:255 G:255 B:252
墨・すみ【sumi】
墨色。植物の油分が燃焼したときにできる煤を膠(にかわ)の水溶液で練り香料を加えて固めたものを硯で磨って使用する。墨は中国の偉大な発明の一つである。古くから松(松煙墨)が知られているが、ほかに菜種、桐、胡麻などの植物油の油煙も原料としている。日本での生産地として奈良や三重が有名である。
カラーコード:#595857
R:89 G:88 B:87
カラーコード:#595857
R:89 G:88 B:87
黒橡・くろつるばみ【kuroturubami】
黒紺色。橡(つるばみ)とはクヌギ(櫟)の古名でやナラ(楢)、カシワ(柏)、カシ(楢)などと同じブナ科に属する。その実ドングリを粉砕して煮出し、鉄分を含む液で媒染して黒色の染料とした。喪服など橡で染めた色を総称して鈍色(にびいろ)という。椿の灰汁を用いると黄褐色の黄橡(きつるばみ)になる。
カラーコード:#544a47
R:84 G:74 B:71
カラーコード:#544a47
R:84 G:74 B:71
雲母・きら【kira】
無色。白雲母の微粉で「きら」「きらら」とも呼ばれる。独特の光沢を持ち、紙の地塗りや料紙装飾に多用された。浮世絵では糊や膠を紙に摺り乾かぬうちに雲母をふりかける(雲母摺り)。または膠と混ぜて直接紙に刷毛で塗る(雲母引き)がある。また紅や鼠色を下地に塗って上から雲母を置いたりもする。
カラーコード情報がありません。
カラーコード情報がありません。
蘇芳/すおう【suou】
紫がかった濃い赤。インド南部やマレー半島などのマメ科植物の芯や実を煎じてつくった。明礬(みょうばん)や椿の灰などによって発色させる。蘇芳は日本では生育しないので古くから輸入にたよっていた。蘇芳による襲(かさね)は王朝文学に数多く登場し、能装束や小袖にも多く用いられている。
カラーコード:#9e3d3f
R:158 G:61 B:63
カラーコード:#9e3d3f
R:158 G:61 B:63
紺青色・こんじょういろ【konjyouiro】
濃い青紫色。群青と同じく藍銅鉱(アズライト)が主原料だが、なかでも色が濃く紫がかったものを紺青と呼ぶ。尾形光琳「燕子花図屏風」がよく知られている。一方でドイツ(プロシア)で1704年に発見された紺青色の人工顔料をプルシャン・ブルーと呼び、日本では浮世絵にも盛んに使われた。
カラーコード:#192f60
R:25 G:47 B:96
カラーコード:#192f60
R:25 G:47 B:96
弁柄色・べんがらいろ【bengarairo】
赤味が強い褐色。土中の鉄分が酸化したもので日本全国いたるところで産出していた。インド東部のベンガル地方を語源とし、東インドの酸化鉄を特にインディアン・レッドとして珍重した。酸化鉛の鉛丹に対し鉄丹と呼ぶこともあるが、実際に鉄くずを焼いて安価に顔料をつくれるようになった。
カラーコード:#8f2e14
R:143 G:46 B:20
カラーコード:#8f2e14
R:143 G:46 B:20
刈安色・かりやすいろ【kariyasuiro】
緑がかった黄色。中部・近畿地方の山地(特に滋賀県近江の伊吹山が有名)に自生するススキに似たイネ科の植物「刈安(刈り易い)」から抽出する。藍と併用して緑もつくられた。刈安と同じイネ科のコブナグサは八丈島では「八丈刈安」と呼ばれ、茎と葉の煮汁によって「黄八丈」の黄色を染める。
カラーコード:#f5e56b
R:245 G:229 B:107
カラーコード:#f5e56b
R:245 G:229 B:107
柿渋色・かきしぶいろ【kakishibuiro】
赤系茶。渋柿の青い実を粉砕、圧搾し、その汁液を発酵させたものの上澄み液を数年熟成させたもので布を染め、紙に塗るなどする。五代目市川團十郎が「暫」で弁柄と柿渋で染めた素襖を着てから「団十郎茶」は市川家のブランドカラーとなった。柿渋には防腐・殺菌作用があり、さまざまに用いられている。
画像:市川鰕蔵 「暫」(いちかわえびぞう しばらく)
カラーコード:#9f563a
R:159 G:86 B:58
画像:市川鰕蔵 「暫」(いちかわえびぞう しばらく)
カラーコード:#9f563a
R:159 G:86 B:58
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