藤村克裕雑記帳
2018-09-25
  • 色の不思議あれこれ107
  • 東武線の不思議な家
  •  今年、何度か、浅草から東武線の特急に乗った。
     その最初の時、途中停車の「東武動物公園駅」を発車してスピードをグングン上げたあたりのところ、進行方向右側の窓の外に偶然、不思議な家を発見した。実に気になって、帰路、今度は進行方向左側窓に陣取って、久喜あたりからずっと「東武動物公園駅」まで、目を凝らしていたが、見逃した。
     2度目、「東武動物公園駅」でカメラを取り出し、右側の車窓にへばり付いてカメラを構えていたが、一瞬、“発見”が遅れ、ブレてしまった。帰路はもう暗くなっていた。
     3度目も同じように失敗。特急ではスピードが早すぎるのではないか、と思われた。
     そこで先日(9月14日)、今度は北千住で東武線各駅停車・久喜行きに乗り込んだ。やっと到着した「東武動物公園駅」で座席から立ち上がり、右側ドアの窓を確保して、カメラを構えていると発車した。よし、今度こそは、と「不思議な家」が見えてくるのを待ったが、なかなか“出て”来ない。列車はスピードをどんどん増していく。と、不意にその「不思議な家」が登場した。えっ? と思うまもなくシャッターチャンスを逃してしまった。特急も各駅停車も、そんなに違わないスピードで、件の「不思議な家」あたりを走っているらしい。
     程なく列車は「和戸駅」というところに止まったので、生まれて初めて和戸というところで降りた。線路の向こうにある中学校から運動会の練習らしき音がスピーカーから大きく聞こえている。
     線路沿いを来た方向に当てずっぽうにずっと歩いていくと、あった! 車窓からの見かけとは、目の高さが違っているのでずいぶん印象が違う。違うが、まさに「不思議な家」である。
     “仕切り”のような大きなパネル状の形状が二つ、一棟の平屋の建物を三分割している。非常に風変わりな建物の光景である。
     庭に立派な庭石が複数ゴロゴロ置かれている。
     建物は、間違いなく「住宅」。しかし、今、人が住んでいる気配はない。雨戸などは閉じられているし、各所に痛みも認められる。あたりにも人はいない。乗用車が一台停まっていたが、この建物の持ち主のものかどうか、建物内部に人がいるのかどうか、わからない。
     近所の家を訪ねてインタビューしてみるような勇気もない。それにしても、この“仕切り”はただのデザインなのか。何か機能性を備えているのか。とても気になる。なるが、人様の敷地に入り込んで建物の周囲を巡るわけにもいかない。それはいけないことだ、と教わってきた。
     道路から、写真を数枚撮ってひとまず満足し、もう一度、駅に戻った。
     再び東武線に乗って「足利市駅」を目指す。足利市立美術館で「長重之展」の内覧会。この“寄り道”で、遅刻してしまった。
     「長重之展」や長さんについては改めて報告したい。
    (9月21日、東京にて)
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  • [ 藤村克裕プロフィール ]
  • 1951年生まれ 帯広出身
  • 立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
  • 1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
  • 1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
  • 内外の賞を数々受賞。
  • 元京都芸術大学教授。
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