ツアー後のシンポジウムでは、ゲストの平倉圭氏が、「スタジオ」とのかかわり方が、クールに一過性のもの、ととらえている人、その場に住み着くことを大事にしているような人、と二分できそうだ、ということから始めて、いろいろ述べていたことは、さすがにするどさを感じさせた。乱暴に言っちゃいけないなあ、と文字通り頭を抱えて考えている様子は、誠実さを感じさせてくれて好感を持った。また、制作中の大事なタイミングで入り込まざるをえない他者の視線の意味について、それがいやだからスタジオは一人で構える、という参加者がいろいろ問題を提起していたのも興味深かった。
考えてみれば、芸大とか美大とかいうところは、今回訪れた「スタジオ」みたいなもので、そこでは絶えず他者の視線が交錯しながら制作がすすむわけだ。他者の視線がある場、というところにこそ大学の意味があるのかもしれない。
そういうわけで、大変面白い一日だった。シンポジウム後の懇親会にも誘ってもらったが、かなり疲れていたのが自覚できたので、失礼して帰ってきた。
(11月3日、東京にて)