この美術館には、「旧井上房一郎邸」がその庭を含めて付属している。というか、「旧井上房一郎邸」の場所に美術館を作ったのであろうか、ともかくその邸宅が公開されていた。不勉強で、この人のことも、建物のことも全く知らずに出くわしたものの、高崎市や群馬県の文化にとって極めて大事な人物、ということを知り、勉強になった。
建物は麻布にあったアントニン・レーモンドの自宅兼事務所の写しだというが、大きな居間のスペースを支える足場丸太の構築の仕方がとても面白かった。庭に別に「仏間」や「茶室」、「物置」があって、「仏間」の畳に庭の樹木からの木漏れ日からの光の筋が生じていてしばし見惚れてしまった。
そんなわけで、美術館は面白かったのだが、あとはもう当てずっぽうで歩いたのである。駅前は東京と何も変わらないが、少し駅から離れるだけで、なんだか不思議な建物が目についてくる。
植物にすっかり覆われてしまった建物や、壁が斜めに迫り出していたり、なぜわざわざこういう構造物を作ったか俄には理解し難い建物などがそれであるが、他の街に比べてそういうものが多いような気がしたのは、あまりに無責任な時間だったからか。
スマホ写真を撮ったりしながら、古本屋を見つけて歓喜し、つい物色したりなどもし、さらにぶらぶら歩いているうちに、「高崎城址」というところに行き着いた。
私は不覚にも、高崎にお城があったことを知らなかった。戦時中は歩兵第十五聯隊が置かれてもいたようである。今は、コンサートホールやギャラリーというような複合的な文化施設があって、それぞれ大胆なデザインのとても大きな建物で、見物していて退屈しなかった。
たまたまその「高崎シティギャラリー」で開催中だった「群馬県立女子大学美学美術史学科実技ゼミ卒業修了制作展2022」というのを見物でき、それはそれなりに面白かった。
そんなわけで、ポッカリと空いた時間も、なんのアテもない時間もいいものだなあ、と思った高崎での数時間だった。
(2月20日、東京にて)
「5つの部屋+I 多彩なコレクションで巡る高崎市美術館30年のあゆみ」
会期:2022年1月15日(土曜)~3月27日(日曜)
会場:高崎市美術館
時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
金曜日のみ 午後8時まで(入館は午後7時30分まで)
観覧料:一般:100(80)円
大学・高校生:80(50)円
※( )内は20名以上の団体割引料金
旧井上房一郎邸
【邸内公開時間】
午前10時~11時、午後2~4時
※予約不要。混雑状況により入室制限となる可能性がございます。
【庭園】
1月~2月:午前10時~午後5時(入園は午後4時30分まで)
3月:午前10時~午後6時(入園は午後5時30分まで)
※予約不要。
会期中の休館日
2月24日(木曜)・28日(月曜)
3月7日(月曜)・14日(月曜)・22日(火曜)
公式HP:
https://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2021111900018/
画像(上)鶴岡政男《香り》1963年頃 油彩・キャンバス
画像(下)山口薫《緑の花嫁》1956年 油彩・キャンバス