藤村克裕雑記帳
2015-01-21
  • 色の不思議あれこれ024
  • 2014年12月京都で小谷元彦展を見た(2)
  • その番組には、『心の社会』(産業図書)でおなじみのマーヴィン・ミンスキーも登場して、具合の悪くなった体の部位を機械と入れ替えれば、人間は200歳以上生きることができる、などと言っていた気もする。まさに、サイボーグ作りの発想だ。SFの世界の話みたいだが、しかし、義歯のようなものや心臓のペースメーカーや人工関節、人工内耳、人工水晶体など、さらに人工心肺とか透析などはまだ嵩張って動かせないが、すでに体の機能を代行しているわけで、いまや“普通に”人体と器具や機械は入れ替え可能になっている。老眼になって遠近両用眼鏡にしたとき、ロボコップのような動きをしなければ焦点を合わせられないので、自分もサイボーグになった気がしたが、眼鏡もまた体に装着して機能を補う重要な器具である。器具や機械だけではない。ES細胞やiPS細胞の実用は近そうだし、遺伝子操作はすでにいろんなところで行なわれている。すごいことになってきたものだ。
    新聞を見ていても、かなりの頻度でロボットの記事が目に飛び込んでくる。二足歩行どころか片足ずつでローラー・スケートをするロボットが開発された、とか書いてある。平地での移動が素早くなる、というのだ。それで、どんなよいことがあるか、私にはわからない。が、ともかく、新聞などには、ロボットの記事がかなり多いのに気づかされる。いつの間にか、人形からロボットの話になってしまっているが、考えてみれば、このところずっと、昨年12月に京都で見た小谷元彦氏の作品が気になってこういうことに目が向くのではないか。
    京都市中心部にある「京都芸術センター」での小谷氏の個展では三つの作品が発表された。
    そのうちの一つは三面がひとつながりで大きく投映された映像インスタレーション作品『Terminal Impact(featuring Maki Katayama “tools”)』。
  • 暗くされた会場とその入り口横の会場外には、その映像に登場した“装置”の部分を成す立体作品のいくつかと、九つの“台座”が配されており、それらのうち、“台座”は、ここに座れますよ、とアフォードしていたので(はやったなあ、アフォーダンス)、私は当然のようにそれに座って映像を見た。
    映像に登場する若い女性の存在感がすごい。女性の両脚は義足で、左手はいわゆる裂指である。左の義足には模様が描かれていて、この女性の内面がある程度伝わってくるような気がする。とはいえ、最初、義足であることにすら気づかなかった。階段を上り下りする様子から義足であることが確認され、刺繍などする様子から左手の裂指が認められたのだ。
    その女性は、義足で階段を上り下りするが、顔の表情がない。お面を装着しているのだ。視野がお面に制約されて大変だろう、などと思う。お面はやがてはずされる。お化粧をきちんとしたきれいな顔の女性だ。
    場面転じて、女性は、動いている大掛かりな“装置”の間に置かれた椅子に座る。型取りされた樹脂製の片脚が添えられた丸椅子だ。それに腰掛けて義足を組んだり、刺繍したり、切り紙をしたり、黒子から特殊メイクのような化粧を施されたりなどする。型取りされた樹脂製の片脚が椅子に添えられているので、時に足が三本あるように見えたりもする。女性が座る丸椅子の周囲にある大きな“装置”には、腕や脚や手の形状の立体が随所に組み込まれて動いている。小谷氏のこれまでの作品からすれば、それらはあえてラフに作られているように見える。それら腕や脚や手の形状の“部品”は正しく“間接”を備えており、モーターの運動で回転したり上下したりしている。女性は時折、右脚の義足で床のペダルを踏んで“装置”の一部になっている義足を作動させる。ペダルがスイッチになって義足を動かすモーターが動くのであろう。“装置”の一部になっている義足と女性が装着している義足とは同じ種類の義足であるように見える。“装置”には他に黄色のお面、電球、ゴムのチューブらしきものなどが配されている。その中で女性がいろいろなことをするのである。
    “装置”を成しているいくつかの部品=腕や脚や手の形状の立体が単独で取り出されて動かされるカットもたびたび挿入される。黒子が手動で回転させたり、モーターのスイッチを入れて激しく回転させたりなどする。全体の背景を成す黒と黄色の幅広のストライプのパネルが時に移動するが、これも黒子が手回しで行なっている。
    この文で20分程の映像がうまく説明できているとはとても思えない。時間が経って細部があやふやになっているところもある。これで精一杯である。勘弁してほしい。

    つづく
  • [ 藤村克裕プロフィール ]
  • 1951年生まれ 帯広出身
  • 立体作家、元京都芸術大学教授の藤村克裕先生のアートについてのコラムです。
  • 1977年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
  • 1979年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
  • 内外の賞を数々受賞。
  • 元京都芸術大学教授。
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