「歯」もたびたび登場し実に効果的である。歯を同じように効果的に扱ったのはデ・クーニング、ベーコン、松本大洋、それからつい最近原宿のギャラリーで見た若い作家の山本直輝など思い浮かぶが、バスキアの場合、文字や歯などはオイルスティックで書かれ(描かれ)、その力の入れ加減が具体的に読み取れる。井上有一のコンテ書を連想したゆえん。同じような形状が並ぶ歯は、文字の並びに対応しているようにも見える。
あと、手作りの木枠。ホゾなどというものを作ることさえ考えないスピード感。枠になってさえいればおっけい! そこに無理やりキャンバスを張る。それがまたカッコいい。
ロールの画用紙をカッターで切る。切ってあればいい、という感じで曲がってる。それもカッコいい。
こんなにカッコいいのに、“疲れ”が見えてくる。なぜか?
忙しすぎたんだろうな。かわいそうに。
そんなわけで、バスキアを堪能したあと、同じ六本木だから、と国立新美術館の「独立展」にも行った。知り合いの大阪の永吉捷子さんが招待ハガキを送ってくれた。永吉さんの今年の出品作をここに掲載してもらおう。
「独立展」には知り合いが多い。が、招待ハガキは吉武研司さんが昔一度送ってくれたっきり、誰も送ってくれない。いいけど。
永吉さんは、どうやらハイチに行ってきたらしく、その印象を描いていた。よく描いているなあ、他と遜色ないじゃん、と思ったけど、二段がけの上にあった。あまりよく見えなかった。あんなに頑張っているのに。でも、他の人たちも頑張っているわけで、やがて二点展示されるようになって、賞を得て、会員になって、芸術院会員にもなって、とそうならなければ、見やすいところに“どーん!”と展示されないのだろう。団体展も大変だ。それにしても、会場全体に出品者たちのすごいエネルギーが充満していて、びっくりさせられた。「独立展」だけでこうなんだから、他の団体展や日本中の展覧会のことを想像すると卒倒しそうになる。絵ってそんなに面白い?
面白いに決まってる! 人それぞれ勝手にやれる、それが一番!
そんなわけで、ヘトヘトになって帰宅した。絵を見るのにもエネルギーがいる。
(2019年10月24日、東京にて)