手紙といえば、「白いときの会」「音会」「山式」「開かれている」「ニルバーナ展」などでは手紙のやりとりだけでなく、手紙そのものも作品化していく。それらの資料が網羅的に展示されていたのは嬉しい。これらの活動は、1977年の「サンパウロ・ビエンナーレ」への団体での参加に連なっていくが、その「サンパウロ・ビエンナーレ」での展示が再現されていた。これも嬉しい。床面に松澤作品が広がり、周囲の壁に松澤と共に歩んできた人々の記録写真が並んでいる。実は、私は最初から松澤宥に関心があったわけではなかった。昨年春に私家版冊子としてまとめた『藤原和通 Ⅰ 1970ー1974 [音響標定]』のための編集過程で、松澤宥という人を“発見”することになったのである。同時に、田中孝道氏、春原敏之氏、山本育夫氏といった人たちを知り、「一般財団法人 松澤宥プサイ(ψ)の部屋」の松澤春雄氏そして松澤久美子氏を知ることになった。そんなこともあって、ぐいぐい引き込まれてきている。展示には、田中氏や春原氏、故金子氏の資料もあって、フリー・コンミューンを志向していた時期のことが生き生きと読み取れる。
「白鳥よ」などの作品、「美学校関係」の資料やパフォーマンスのビデオ、「プサイの部屋」の再現展示などが続いて、最後はヘトヘトになってしまった。
“オブジェを消し”て以降も、文字を記した紙やパフォーマンスの写真や映像は残った。「啓示」以前の作品群や資料群も残されていた。だから、こうして松澤宥の足跡を辿る事ができる。幸いというべきか。
大急ぎで長野駅に戻り、列車に飛び乗って松本に向かった。続く。
(2021年3月8日)
「生誕100年 松澤宥」
2022年2月2日(水)~ 2022年3月21日(月)
休館日:毎週水曜日
時間:9:00~17:00
会場:長野県立美術館
観覧料:一般800(700)円、大学生および75歳以上600(500)円、高校生以下無料
※()内は20名以上の団体料金
※本館コレクション展および東山魁夷館との共通料金=一般1300円、大学生および75歳以上900円
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と、付き添いの方1名は無料
[関連展示情報=松澤宥 生誕100年祭]
会期:2022年1月29日(土)~3月21日(月・祝)
※諏訪湖博物館以外の施設は2月13日(日)まで
会場:諏訪湖博物館・赤彦記念館、下諏訪町内各施設
生誕100年記念サイト
https://www.gazaizukan.jp/fujicolumn/index.php?pid=2
長野県立美術館公式HP
https://nagano.art.museum/
画像上:《実のプサイの部屋》1964年
下:『ニルヴァーナ』展 (1970年)カタログ