「古本屋ツアー・イン・ジャパン」を 知らない人は、すぐに検索してみるべきだ。驚くべきブログなのである。
私は5、6年前に偶然これを見つけた。そこには、全国各地、古本屋であれば(いや古本屋でなくとも古本を販売しているとなればどのような業態のお店でも)労をいとわずそこを訪れて、お店までの順路とお店の様子を冷静に記述し、必ず最低でも一冊は購入してその本を紹介するとともに、お店の外観写真あるいは購入した本の姿の写真を添えるという、神出鬼没の記録が日記の形式で示されている。これを前に私は驚嘆し抜き、当日の記事は言うに及ばず、思わずこのブログの開始時点、2008年5月10日の宇都宮市は山崎書店の記事に至るまでひとつひとつ辿りながら夢中で読んでしまった。ほぼ一日かかった。そして、誰彼かまわず、あのさ、すごいブログを見つけた、知ってる? と吹聴して回った。以来、ときどき覗いてはその営みの継続を確認している。さっき確認したら、本日もちゃんと続いている。ほぼ毎日書き続け、アップしているのだ。ということは、毎日古本屋を巡っているのだ。すごい。このブログ記事は小山力也というひとの手によるものである。じつに面白い。
近年、小山氏の活躍は大変に目覚ましい。あんなに面白いんだから、当然であろう。その小山氏の活動を紹介する展覧会をみた。
神保町の古書会館二階展示室。展示は、件のブログのための手書きのメモの実物から始まる。そのメモは、ハガキ大ほどの方眼のメモ帳にボールペンでびっしり書かれている。聞くところによれば、訪れた店内を何食わぬ顔で巡りながら、棚や什器や帳場のレイアウト、本たちのジャンルの配置を記憶して、帳場でさりげなく本を購入したあとお店を出て超特急でメモするのだそうだ。展示されているメモの実物を見ると、いかにも急いで書かれているが、平面図=棚の配置図を含めて勘所をはずしていない。すごい。
次に展示されているのは、訪れた古本屋が発行しているカード類だ。古いものから最近のものまでたくさん。懐かしいお店のもある。こういうものも見逃さず入手して大切に保管し続けているのも小山氏のすごいところである。加えて、包装紙や袋のコレクション。知っているものもはじめて見るのもある。
そして、いわゆる「掘り出し物」だ。ええーっ? これをこの値段で入手したの? いいなあ! というようなものだ。古本好きのクライマックス。が、展示されていた本から、私にはそのすごさが分からなかった。ネコに小判。
思いがけないことに、小山氏が小学校三年生の時に書いたという作文も展示されていた。小山氏が探偵小説マニアであることの証明らしい。いかにもかわいくてほほえましい。よくとってあったものだ。
また、ブログから次第にハバがひろがってきた小山氏の活動の軌跡を、小山氏の手になるチラシ、雑誌など文が掲載された印刷物、CDジャケット、本などで示している。なるほど、小山氏はグラフィックデザイナーだったのだ。その成果品でもある。
会場中央には、日頃持ち歩いているらしき地図。白黒コピーされた地図にお店の所在地が赤く印付されている。なるほど、見やすい。折り目にはセロテープの補強がなされている。じつに無駄がなくてかっこいい。
ところで、小山氏がデザイナーであることとは無関係だが、古本屋さんには美大の出身者がけっこういるらしく、私のような者でも、鳥取市の邯鄲堂さん、下北沢のほん吉さん、国分寺のまどそら堂さんなどが美大出身者であることを知っている。私も美大の出身だが、だからかどうか、一年ほど前から、毎週2日間だけ(日・月)午後にガレージを改装した超狭小のお店で古本を売っている。お客も超狭少だし宣伝もしていない。ま、楽しく終活ですかね。
それで、驚くなかれ。小山氏は私の狭小のお店にも現れたらしいのだ。私は不覚にも小山氏に気がつかなかったが、このように、まことにすごい人なのである。私のお店は「古本・おふね舎(や)」(東京都公安委員会許可第304351605083)というのだが、いったいどこにあるか? 「古本屋ツアー・イン・ジャパン」を検索するとちゃんと書いてあります。
●古本屋ツアー・イン・ジャパン webサイト
http://furuhonya-tour.seesaa.net/article/448172062.html
●古本屋ツアー・イン・ジャパン
http://www.kosho.ne.jp/news/news_info170919.html
会期:2017年9月13日~10月16日
時間:午前10時~午後5時 日曜・祝日閉館
千代田区神田小川町3-22 東京古書会館
2017年10月6日 東京にて