そして故原口典之さんの「オイルプール」。圧倒的に美しい。原口さんが中野のプランBの床に設営した「オイル・プール」で泯さんが踊った時の感動は忘れることができない。そのことは以前、ここに書いた。
さらに、故木幡和枝さんへの英語でのインタビュー映像。この人が「白州」で果たした大きな役割は忘れられない。素晴らしい人だった。ああ、見ている時間がない。「シンポジウム」が始まってしまう。
原口さんのドローイング、高山さんのドローイング、榎倉さんの版画、これらは泯さんのコレクションだろうか。そういえば、一階壁には、故藤原瞬さんの作品やリチャード・セラのドローイングもあったし、カレル・アペルが巨大なキャンバスに“ライブペインティング”した時、一緒にペイントされてしまった泯さんがその時に着ていた作務衣も壁にかかっていた。
地下から吹き抜けを見上げれば、エイサーなどの記録映像が壁の高いところにプロジェクションされている。
そんなこんなでシンポジウムの会場に滑り込んだが、あれま、始まっていた。
前田礼さんの司会で北川フラムさん、名和晃平さん、田中泯さん、巻上公一さんが次々に話をしてくれる(告知されていた遠藤利克さんは不在であった。渋滞の真っ只中であろうか)。とはいえ、それらの“実況”などはここではとても無理。言えるのは、とても面白い「シンポジウム」だった、ということ。シンポジウムの会場になった部屋の壁にはポスター、チラシ、パンフレットなどの印刷物がびっしりと貼りめぐらされていた。
「シンポジウム」終了後、バスの出発時間まで、もう一度展示会場を巡ったが、1988年のビデオ映像で足が止まってしまった。津軽三味線の山上進氏が、場の雰囲気に応えて「身体気象農場」建物の2階で演奏し始め、ミルフォード・グレイブスがその演奏に呼応するようにトーキング・ドラムを演奏し始め、やがて二人での演奏が始まる様子が捉えられていた。プロジェクターから壁に投影されるビデオ映像を見ながら、その現場に居合わせたものの一人としては、なんとも言いようのない感情にとらわれた。
あれからずいぶん時間が経って、亡くなってしまった人も少なくないけれど、「シンポジウム」の終了後、田中泯さんと極少の挨拶を交わして、ああ、「白州」は過去のことではなく、今も続いているのだなあ、と改めて考えながら帰路のバスに乗り込み、東京駅近くで散開したのだった。
展覧会に合わせて刊行された図録が素晴らしい。知らなかったこと、忘れていたことが満載で、短い準備期間のうちによくこれだけのものをまとめたものだ、と驚くやら感心するやら。プロの仕事ぶりを垣間見た次第。
(2022年10月29日、東京にて)
試展-白州模写 「アートキャンプ白州」とは何だったのか 展
●会期:2022.10.29.SAT.- 2023.01.15.SUN.
●開館時間:平日/10:00~17:00、土曜・祝前日/9:30~19:00、日曜・祝日/9:30~18:00(最終入館は閉館時間の30分前まで)
●休館日 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始[12月29日(木)~1月3日(火)]
●料金 一般:1,000( 800 )円 / 大高生・65 歳以上:800( 600 )円
*()内は 20 名以上の団体料金。
*中学生以下無料・障がい者手帳をお持ちの方とその介添者( 1 名)は無料
*支払いは現金のみとなります。
●市原湖畔美術館
公式HP
https://lsm-ichihara.jp/exhibition/the_trace_of_hakushu/